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「あのう……。」
老婆がぼくのうしろから声をかけた。

どれくらい時間が経っていたのだろう。
はっと気づくと、目の前の海はすっかり夜の色をまとい、
眼下の道はテールランプが行き交っては遠ざかってゆくのを繰り返し彩なしていた。
老婆は声をかけるタイミングを逸してぼくを見守っていたが、あまりに動きがないので耐えかねて音を発した…
…というふうだった。
「あ、すみません、あの……」

慌てるぼくの横にまわりこんだ老婆はぼくの目の高さまで腰をかがめ、
ゆっくりと、優しく、けれど真っすぐにぼくの目を見てこう言った。
「だいじょうぶ?」