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Garden #2 残された鉢植え


今はただ がらんとしただけのその場所に、冬の風が吹きすさぶ。
君の残した鉢植え、どうしていいのかもわからずに 水をあたえてみる。

ぼくは君に、結局なにもしてあげられなかったね。
永遠の愛を誓うと決めたのに、
健やかなるときも、病めるときも、
かわらぬ愛を誓うと決めたのに。

君がいなくなってから ぼくは
ものごとの終わりと、永遠について
くりかえし 考えている。
永遠なんて、本当はこの世にないのかもしれないね。
季節はめぐり、すべての物は必ず終わりのときを迎える。
ぼくと君も。ぼく自身も。

季節はめぐり、この鉢植えにももう終わりのときが来たのか?
残されたはちうえ、残されたぼく。
この庭に、あたらしい命はもう、芽吹かない。
ぼくもそろそろ、終わらせなくては。
ぼくはもう、君を包めないから、
ぼくの存在は、君を苦しめるだけだから。

覚悟を決めようと水差しを置こうとした、その、瞬間。
それはささやかなこと、
だけど、そんな想いで水やりを続けてきたぼくにとっては最も重大な事件。

残された鉢植えに、枯れ草色にまぎれてあたらしい緑。
春は誰のうえにも 平等に訪れるのだ。


P.S.君もどこかで この春を感じているの?

 
 
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